素敵な上司とキュートな部下

加奈子は香川に気付かれないよう、そっと指の腹で目の涙を拭った。

そして夜空を見上げれば、それまでちゃんとは見ていなかったが、大きく赤や青に弾ける花火は、確かにとても綺麗だなと思った。


「そうですね。花火って本当に綺麗……」

「え? ん……花火も確かに綺麗だが、今僕が言ったのは花火の事じゃないんだ」

「…………?」

「僕は花火よりも、その……君の横顔の方が遥かに綺麗だと思った」

「えっ……。部長ったら、冗談ばっかり」

「いや、冗談ではなく本当にそう思ったんだよ? こういう台詞には慣れてないから、ひどく照れ臭いんだが……」


香川は、夜目でもはっきり分かるくらいに頬を赤く染めていた。


「もう、部長ったら……。冗談じゃないとしたら、目がお悪いのだと思います」

「いや、そんな事はない。この間の健康診断で両目とも1.2あったからね」


香川のその大真面目な言い方が可笑しくて、加奈子は思わずクスッと笑った。


「おお、笑ったね?」

「あ、ごめんなさい。失礼ですよね?」

「いや、そうじゃないんだ。今夜の君は何だか元気がないように見えたんで、何かあったのかなと心配してたんだよ。でもようやく笑ってくれて、良かったなと思ってね」


加奈子は香川の言葉に、ちょっとした感動を覚えた。香川がそんなにも自分を気にかけてくれた事に……