素敵な上司とキュートな部下

大輔が言った通り、パソコンの設定にはあまり時間が掛からなかった。おかげで加奈子はすぐにパソコンは使えるようになったのだが、流通とは勝手が違い、加奈子には分からない事が色々とあった。


「ああ、それはですね、ココをこうすればいいですよ」


加奈子が困っていると、それを敏感に察知した大輔がすぐに教えてくれた。その度に大輔の顔が間近に迫り、ドキッとする加奈子だった。


「ごめんね、教えてもらってばかりで……」

「いいんですよ。最初は慣れるまで大変ですよね? 遠慮しないで、何でも僕に聞いてください」

「うん、ありがとう……」


至近距離から加奈子に向けられる大輔の爽やかな笑顔と、彼から発するミント系の香りに、加奈子の心拍数はその都度急上昇するのだった……



「岩崎君、飯に行こうか?」


香川から声を掛けられ、壁の時計に目をやると、それは正午ちょうどを指していた。加奈子は夢中でパソコンを操作していて、時間が経つのも忘れていたらしい。


「あ、はい」

「嶋田も一緒にどうだ?」

「はい、お供します!」

「えっと、桐谷君は弁当だったかな?」


香川は、大輔の左の席に座る桐谷美由紀にそう声を掛けた。


「はい。あ、でも大丈夫です。行きます。行かせてください!」


桐谷美由紀は慌てて立ち上がると、女の子らしい声で訴えるようにそう言った。