素敵な上司とキュートな部下

「先輩、金魚すくい、やりましょうよ?」

「はあ? そんなもん、ガキじゃあるまいし……」

「えー? 私、やりたい……」

「部長……?」

「いいじゃないか、やってやれよ?」

「はあ……」

「やったあ!」


美由紀が花柄の巾着袋から財布を出そうとしたら、


「いいから」


と言って大輔はそれを手で制し、素早く財布から硬貨を出して屋台のお兄さんへ渡した。そして網のようなものを受け取ると、「はいよ」と言って美由紀に差し出した。ところが……


「先輩がすくってください」

「はあ? 何言ってんだよ。おまえがやりたいんだろ?」

「いいんです。先輩にお願いします。自信ないんですか?」

「ば、バカ言えよ。俺はこういうの得意なんだ」

「じゃあお願いします」

「よし。見てろよ? 何十匹もすくってやっから」

「期待してまーす」


プールのような容器の中を泳ぐ赤や黒の金魚たち。それを屈んで食い入るように見る美由紀と大輔。加奈子と香川は彼らの後ろからその様子を覗き込むように見ていた。


「よし、まずは一匹ゲット!」


大輔は早々に赤い金魚を一匹すくった。


「わあ。さすがー!」

「こんなの軽いって。次はこのデカイ奴をすくってやるかな」


大輔が次に狙いを定めた金魚は、腹の大きな琉金だった。


「上手くすくうコツはだな、後ろからこうやってすーっと……あっ」

「えっ?」


琉金をすくった直後、網は無情にも破れてしまった。