当然ながら、美由紀の浴衣姿は大輔と香川の目を引いた。


「おまえ、会社で着替えたの?」

「はい。それで遅れちゃいました」

「それはいいけど、すげえ気合い入ってんだな?」

「だって、こんな時じゃないと着れないから……。それより先輩、どうですか、私……?」


美由紀は浴衣の袖を持ち、女性誌のモデルさながらなポーズを取ってみせた。


「うん、馬子にも衣装って奴だな」

「何ですか、それは……」

「可愛いし、良く似合ってるよ、桐谷君」

「あ、ありがとうございます。部長……」


大輔にからかわれて頬を膨らましたと思えば、香川に褒められて満面の笑みを浮かべる美由紀。その若々しいリアクションを横目に、疎外感を覚えて呆然としていた加奈子だったが、


「岩崎君も着れば良かったのに……」


意外にも香川からそう言われ、


「わ、私は、そんな……」


慌てて手を振る加奈子。


「そうですよ。僕も主任の浴衣姿を見たかったなあ」


と大輔も続けて言ったが、それを聞いて美由紀が顔を曇らせた事には、誰も気付かなかった。