加奈子と美由紀は、定時になると同時に席を立ち、周りに挨拶をして職場を出た。

その時、加奈子と大輔はほんの僅かな時間だが目と目が合った。大輔は微かに微笑み、きっと今夜の花火を楽しみにしてるんだわ、と加奈子は思った。


女子の更衣室で美由紀は持って来た浴衣に着替える事になり、加奈子はそれを手伝った。

美由紀の浴衣は紺色地に大きな白い百合の花模様の、かなり大人っぽいもので、子どもっぽい美由紀には少し無理があるように加奈子は思った。しかしそれを着て、髪をアップにしてメイクを直した美由紀の浴衣姿は、意外にも色気があった。


「どうですか?」

「とっても素敵よ」

「ほんとですか!? ありがとうございます。主任も着れば良かったのに……」

「そうね……」


美由紀の浴衣姿を目の当たりにし、自分も着たかったかなと思う一方、美由紀と比べられたら敵わなかったろうな、とも思い、複雑な気持ちのする加奈子であった。