それから一週間近くが過ぎた。


加奈子は大輔への想いを諦めようとしたが、そう思えば思う程、逆にその気持ちが強くなり、最近は大輔を意識し過ぎて仕事が手に付かない程だった。


「岩崎さん、チラシの枚数はまだ決まらないの? 昨日までまとめてって言ったわよね?」


宣伝課の西村が、部内全体に聞こえる程の大声で加奈子をなじった。


「あ、すみません。すぐにまとめてお知らせします」

「しっかりしてよね? みんなが迷惑するんだから……」


加奈子がシュンとしていると、


「主任、あと誰と誰ですか? 僕が催促しますよ?」


と、大輔が加奈子に顔を寄せて小声で言った。

販売促進課のメンバーからの回答が遅れ、そのためにチラシの製作枚数が決まらないのだが、それを大輔は知っていて、自分が未回答のメンバーに催促すると加奈子に申し出たのだ。


「ありがとう。でも大丈夫。自分でするから……」

「そうですか? なんか最近の主任、元気がなくて僕は心配なんです」

「ごめんね? 心配掛けて……。でも大丈夫だから……」


心配そうに自分を見つめる大輔の、その優しい眼差しに耐えきれず、俯いてしまう加奈子だった。


(そんなに優しくしないで? 気持ちが溢れ出しちゃうから……)