表に出て、車に近付いた所で大輔は立ち止まった。


「主任?」

「ん?」

「あの、これから出掛けましょうか?」

「な、何言ってるのよ、嶋田君まで……。剛史の冗談を間に受けてそんな事したら、後で何を言われるか分からないでしょ?」

「主任は困るんですか?」

「そりゃあ、困るわよ。有る事無い事勘繰られるのはごめんだわ」

「そうですか……」


大輔は表情を曇らせ、ドアを開いて車に乗り込んだ。そして加奈子を見上げたが、その目が哀しそうに見え、加奈子は胸が締め付けられるのを感じた。


「嶋田君……」


“どうしたの?”と言葉を続ける前に、


「では、失礼します」


と大輔に言われてしまい、


「運転、気を付けてね?」


と言って、加奈子は無理に笑顔を作った。


門から外に出て、走り去る大輔の車を見ながら加奈子は深くため息をついた。


(彼の事、諦められるかなあ……)