素敵な上司とキュートな部下

翌日、大輔が花火大会へ行く事を美由紀に話すと、美由紀は「やっぱりね」と呟いてから、嬉しそうにニコッと笑った。


「私、浴衣を着て行こうと思うんですが、主任もそうしませんか?」


(すごい気合の入れようだわね。そう言えば、昨日も『ママに浴衣の着付けを教わる』とか言ってたものね)


「私はいいわ」

「どうしてですか?」

「面倒だし、最近、浴衣作ってないし……」


という事もあるが、気合が入っているなと、大輔やまだ未定の連れの男性から思われたくないのと、若くて可愛い美由紀と比べられるのは嫌だからだ。


「そうですか……。だったら、私もやめた方がいいですよね?」

「そんな事ないわよ。私に気兼ねなんかしないで、桐谷さんは着ればいいじゃない?」

「そうですか? じゃあ、そうしようかな」


(初めからそのつもりのくせに……。この子って、案外強か[したたか]なのね……)


「そう言えば、もう1人なんだけど……」


加奈子は、花火大会へ行く4人目について、美由紀に相談しようとしたのだが……


「それはもう決まってます」

「え、そうなの?」

「はい。昨日の内にしっかりゲットしました。誰だと思いますか?」

「さあ……」

「香川さんです」

「あらま。よく承知したわね?」


(なんだ……。嶋田君はあんな事言ってたけど、別に私が誘わなくてもあの人は行くんじゃない……)


と思った加奈子だが、


「初めは嫌そうな顔してましたけど、主任も行くって言ったら顔色がパッと変わって、“仕事が片付いたら行くかな”ですって。分かりやすいったらありゃしない」


だそうだ。何が“分かりやすい”のか聞いてみたい加奈子だったが、あえてそれは聞かなかった。それをするのは、美由紀の思う壺な気がして癪に触るのと、聞かなくても、美由紀が言いたい事はおおよそ想像がついたから……