素敵な上司とキュートな部下

「岩崎君は、当分の間は私に付いて仕事を覚えてもらおうと思う。以上。みんな仕事に戻ってください」


香川のその締めの言葉で、部員達は銘々の仕事に戻った。『やっぱりな……』という顔をする者が多かったのだが、加奈子がそれに気付くわけもなかった。


「岩崎君の席はここだ」

「あ、はい」


営業部には書籍課、雑誌課、宣伝課、外販課の4つの課があり、それぞれがいわゆる“島”となって机が並べられている。

加奈子の席は当然ながら書籍課の島で、一番窓寄りで部長席のまん前。向かいは課長の小林で、左は嶋田大輔の席だった。


「よろしくお願いします」


加奈子が彼らに向かってお辞儀をすると、眼鏡を掛けた痩せ型で神経質そうな小林は、「こちらこそ」と無表情で言葉を返しただけだったが、


「こちらこそ、よろしくお願いします。何かわからない事があったら、何でも僕に聞いちゃってくださいね」


それとは対照的に、嶋田大輔はやや高めの声でそう言い、屈託のない笑顔を加奈子に向けた。


「は、はい。どうもありがとう……」


(うわあ。嶋田君って間近で見ても、すっごい綺麗な顔してる……。人気があるわけだわ。私なんかが隣に座っていいんだろうか。それにこの笑顔、強烈だわ……。ちょっと心臓に悪いかも)