「あっ……」


大きな声を出しそうになったのを、両手で口を塞ぎ抑える。


そこには堤所長が、ベッドに身体をもたれかけて寝ていた。


ベッド脇のサイドテーブルの上には、氷水の入ったプラスチック製の洗面器が置いてある。


その横の時計を見れば、夜中の三時を過ぎていた。


こんな時間までずっと、私の世話をしていてくれたの? バカだのキモいだの怒って、予測不可能なことを起こすって呆れていたのに……。


眉間にシワを寄せて、でも気持ちよさそうに小さな寝息を立てている堤所長の頭に、そっと手を寄せる。仕事の時のようにワックスできちっと整えていない髪は柔らかく、撫でていると指にふわっと絡む感じが気持ちいい。


熱で熱くなっている身体がそれ以上に熱くなってきても、止めることができず撫で続けていたら、堤所長が「うぅん……」と身体を小さく動かした。


マズいっ、起こしたかもっ!?


慌てて手を離すと目を瞑り、タヌキ寝入りを決めこんだ。


バレてないよね?


息を呑み、しばらく様子をうかがう。しかしいつまで待っても、堤所長の起きた気配が感じられない。


うん? 起きてなかったとか?


確かめようと、ゆっくり目を開ける。


「うわあぁぁぁっ!?」


数センチも離れていない距離に堤所長の超イケメンな顔が微笑んでいて、慌てて身体を離すと、後ろに跳ねすぎて後頭部を壁に激突させてしまった。