極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~


何も考えることができずふらふらと二~三歩後退し、廊下の壁に背中が当たるとへなへなと座り込んだ。


どうしよう。堤所長の裸、見ちゃった。それも下半身をしっかりと……。


ヤバいッ、これってかなりヤバいよね? 絶対に堤所長、中で激怒してるよね。


やっぱり、いきなり扉を開けた私が悪い……?


どうする、菜都? 


『すみません堤所長。見ても減るもんじゃないですし、気にしないで下さいねっ!!』


って、軽く言ってみちゃう?


いや無理無理。それ逆に、火に油を注ぐようなもんだから。


じゃあどうすんのよっ!!


見なかったことにするっていうのはどう? うん、それいいっ。そうしようっ!!


目を閉じて、ブンブンと頭を振ってみる。でも何度同じ事をしてみても、頭の動きを止めると脳裏に浮かんでくるのは……。


「あぁ~、忘れらんないっ!!」


さっき失恋してしまったばかりだというのに、あんなもの見せられて(見せられたなんて言うのは、ちょっと堤所長が可哀そうだけど…)、こんなの生殺しだよっ!!


はぁ~と溜息をつき頭を抱えると、またもバンッと扉が勢い良く開く音がした。何歩か足音が聞こえ、その足音は私の前で止まった。


申し訳ないやら怖いやら恥ずかしいやら……。いろんな思いが交差して、顔が上げられない。