ふと嫌な予感が脳裏を掠める。
堤所長が初めて旭営業所に来た日。自己紹介で独身とは言っていたけれど、彼女もいないとは言っていなかった。
あの場所で『彼女はいます』なんて、そんなプライベートなことを言う人はいないと思うけど……。
でも本性はどうであれ、あれだけのイケメン。しかも33の男に彼女がいないはずがない。
それなのに私ときたら一目見ただけで“ビビビッ!!!“とか来ちゃって、ドラマみたいな恋“キタァーーー!!!”なんて舞い上がっちゃって。
そんな簡単なこと、もっと早くに気づくべきだったのに……。
無理やり、確信犯的に、こんなところまで連れてこられて、もしかしたら堤所長も私のこと……なんて、少し期待した私がバカだった。
なんて軽くて、なんてめでたい女なんだろう。
あっという間に、夢やぶれてしまった。
「やっぱり今日はツイてない」
呆気無くジ・エンド。失恋決定とガックリ肩を落とす。
暫くの間俯き目を閉じていると、悲しみに包まれている身体の奥から、ふつふつと怒りが湧き始めた。



