堤所長がいなくなったリビングでYシャツの裾をめくり、もう一度その下着を見る。
サイズ的には何ら問題もない。でも普段身に着けているレースやリボンで飾られた可愛らしいショーツとは違い、これはどう見てもおばちゃんがはきそうな、お腹すっぽりヘソまで隠れる大きなパンツ。
色はピンクだったのが、救いだ。
「でも、せっかく用意してくれたんだし」
Yシャツの裾を戻しダイニングテーブルの椅子に腰を下ろすと、すぐ前の壁側に配置してある食器棚が目に入った。そして中に整然と並べられている食器類を見て、あることに気づいてしまった。
茶碗にお椀。コーヒーカップやソーサー。どれもがペアで揃っている。
食器棚から目を外し、部屋の中を見渡す。
真新しいマンションの最上階。男のひとり暮らしには広すぎるリビング。まだ他にも、何部屋かありそうだ。
カーテンの模様や壁に飾られている素敵な絵。キャビネットの上の置物やガラスのコレクションキャビネットに飾られている、高そうなグラスたち。
どれを見ても、それらが堤所長ひとりの好みで選び揃えられたものとは、到底思えない代物ばかり。
ソファーの上には、レース付いた淡いブルーとピンク、お揃いのクッション。足元に目を落とすと、私が履いているスリッパも、さっき堤所長が履いていたものとお揃いだった。



