バスルームを出ると廊下をキョロキョロと見渡す。ひとつだけ明かりが付いている部屋を見つけると、そのドアをを開けた。
顔だけを出して部屋の中を覗くと、ダイニングテーブルの椅子に腰掛け、新聞を読んでいる堤所長を見つける。
「堤所長。シャワー、お先に使わせて頂きました。ありがとうございます」
そう声をかけると、堤所長は新聞を読む手を止め私を見た。そして少しの間の後、「あぁ」と言って立ち上がった。
「おれもシャワーしてくるか。喉乾いてるなら、冷蔵庫の中のもの適当に飲んでくれて構わないから」
無表情のままそう言うと、リビングから出て行こうとドアノブに手を掛けた。
「あのっ!!」
大きな声で呼び止めると、足を止めた堤所長がこちらを振り返る。
「何?」
「このYシャツに、それから……下着、ありがとうございました」
少し照れくさくて、尻つぼみに声が小さくなってしまった。
「あぁ、そんなんで悪いな」
「いえっ、とんでもないっ。助かりました」
「あっそ」
たった一言そう言うと、足早にリビングから出て行ってしまった。



