極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~


立体駐車場からマンションへの通用口を抜けエントランスに行くと、その奥にあるエレベーターの前で足を止める。


車での私に態度が余程気に入らなかったのか、怒鳴られてからは一言も口を開かない。顔も怒ったようなまま。


無理やり連れてきて、その態度。怒りたいのはこっちの方なのに、全くもって気に入らない。


会社いる時の堤所長は鳴りを潜めてしまい、優しさの欠片もあったもんじゃない。


エレベーターで最上階の十二階まで行くと、廊下左奥の部屋の鍵を開け、ドアを開くと私を放り投げた。その勢いにバランスを崩し、尻餅をつく。


「もう、堤所長っ!! 何も投げることないじゃないですかっ!!」

「悪い悪い、手が滑った」


そんなもん、滑るかっ!! 絶対に、計画的犯行でしょっ!!


それに人に謝る時、“ごめん”は一回って先生に言われなかった? ごめんごめんとか悪い悪いとか二回言っちゃうと、打ち消されて謝ってないことになっちゃうって。


なんて、そんなことを今私の目の前でニヤニヤしている人に言ったって、「あっそ。で?」なんて聞かれるのがオチだ。


床に打ち付けたお尻を擦りながらゆっくり立ち上がろうとしたら、放り投げた本人が手を差し伸べてきた。


だったら最初から投げないでよ……。