デスクに突っ伏し、少し滲みかけた涙を指で拭う。
事務所にひとりで良かった。こんな涙姿、恥ずかしくって、誰にも見せられない。
デスクの引き出しからポーチを取り出し、小さな手鏡で顔をチェック。大した顔はしていないけど、泣いた目のままで仕事をするわけにはいかない。
綿棒で少しだけ目尻を整えると、今度こそ真剣にパソコンと向かい合った。
「やっと終わったぁ~」
両手を組み背筋を伸ばすように高く上げながら、窓の外を見る。
「あれ? もう暗い」
時計を見ると、また六時少し回ったところ。今は七月で、いつもならまだこの時間は明るい。でも今日は昼過ぎから天気があまり良くなく、曇っていた。
だから暗いんだ……。
隣の席の未歩ちゃんは今日はデートだそうで、五時になると彼女には珍しく「お先にしつれいしま~す」なんて、ちゃんとしたあいさつをして帰っていった。まぁ例のごとく、語尾は伸びていたけれど。
パソコンの電源を切り、伝票を片付ける。飲んでいたお茶や各デスクのゴミを袋にまとめると、倉庫にあるゴミ置き場まで運んだ。
「なっちゃん、仕事終わったか?」
明日の準備をしていた配送主任の宮村さんが、私を見つけて声を掛けてきた。



