未歩ちゃんに『お茶の子さいさい』と言ってから二時間とちょっと。時計の針は三時を指していた。
デスクの上はと言うと……。
伝票の枚数は、思ったより減っていない。
堤所長に注意を受け、挙げ句の果てに呆れられて。恋も仕事ももうこれ以上進むことはないんだと、受けたショックは想像以上に大きくて。
一枚処理しては深い溜息をつき、一枚処理しては……を繰り返していたら、とうとう未歩ちゃんまで事務所からいなくなってしまった。
ひとり、事務所内に取り残された私。
一時間くらいまえに掛ってきた電話はどうやら堤所長だったらしく、未歩ちゃんがホワイトボードの所長欄に“直帰”と書き込んだ。
こんな状態の自分を見られなくて良かったと思う反面、今日中にもう一度堤所長に会ってちゃんと謝りたい、という矛盾した気持ちが私の中でひしめき合って、心を痛いくらいに苦しめる。
拓海くんや未歩ちゃんにも多大な迷惑を掛けてしまい、先輩としても情けない。



