我慢していた涙が目に溜まりだし、私の視界をぼやけさす。
いくら好きになってきている人とはいえ、まだこの営業所に来て一ヶ月も経っていない堤所長。お客のことも私のことも、全然わかってないよね。
でも、それでも、私のことを信じていてほしかった。庇ってほしかった。
って思うのは、仕事をしてる人間としていけないことなんだろうか……。
何をおいても、お客様が一番。白いものでもお客様が“黒”と言えば、それは黒なんだ。
そんなこと、私だってわかってる。私が甘いってことも……。
なんの涙なのかわからない涙が頬を伝い、慌ててそれを拭う。
「菜都さんが泣くことないじゃん。悪いのはカンナ水道の社長なんだし」
「西野っ!! お前そんなんじゃ、社会人として失格だぞっ!! それでも相手は客だ。客の言うことにいちいち反論してどうするっ!!」
厳しい口調で西野くんを叱責すると、バッグを持って歩き出した。
「西野っ、すぐに100のボルド用意しろっ!! 俺は先に現場に言ってるから、急いで来いっ!!」
そう言うと、事務所から出て行ってしまった。



