「なんだよその顔。笑うのか泣くのか、どっちかにしろ」
笑ってるのに泣いてるって、どういうことよ。
言ってる意味がわからなくてしばらく考えていると、頬に違和感を感じた。そこに手を当てると……。
「あれ?」
龍之介の言った言葉の意味を理解する。
ウジウジしているのはみっともないなんて言っておきながら、何泣いてるのよ菜都!!
自分で自分がコントロールできなくなってしまって、もうお手上げ状態。
泣き笑いのグチャグチャな顔で、龍之介に嫌われなければいいけれど……。
なんて心配していると龍之介の顔が間近に迫り、そのまま唇が重なる。
どんな状況の時にしても、龍之介のキスは私の気持ちを正常に戻してくれる。
優しく、それでいて熱いキスは、角度を変えて何度も何度も合わさる。
それは龍之介からの“好き”の気持ちがたくさん伝わってきて、『嫌われなければいいけれど』なんて言葉は、あっという間にどこかへ飛んでいってしまった。
「菜都のバカで勘違い女。俺がいつ本社に行くって言ったよ。まぁ確かに、この前本社に行った時に戻ってきてほしいとは言われたけどな。断った」
「断った!? なんでっ?」
そんなことしていいの? そんなことして、龍之介の出世に影響しないの?
今度は別の意味で心配になって、興奮から龍之介の胸ぐらをグッとつかんだ。



