「でも、そんな心配はいらなかったわよね。菜都さんは龍之介さんのことが、誰よりも好きなんだから」

「えっ!?」


それはそうかもしれないけれど、何も今ここで言うことはないと思うわけで……。


その言葉を聞いた龍之介は、満足そうに椅子に腰掛けてふんぞり返っていた。


「ねぇ菜都さん。私が今日ここにお邪魔したのはね、ちょっと報告があって」


椅子に深く座り直した清香さんは、私の顔をジッと見据えた。


その雰囲気に押され、私も背筋を伸ばした。


「嫌なことを思い出させちゃうかもしれないけれど、あなたが弘田さんの襲われそうになった時……」

「おいっ清香!! そのことは……」

「龍之介、私は大丈夫だから清香さんの話を聞かせて」


息を荒らげた龍之介をそっと手で制すると、私の気持ちが伝わったのか龍之介はスッと椅子に腰を下ろした。


「ごめんなさいね。さっきの続きだけど、菜都さんは社員旅行が始まってから龍之介さんの態度が可怪しくて不安な日々を送っていたはずよね。それは私のせいでもあるんだけど」

「はい……」


そう、今思い出してもわけがわからなくて、せっかくの社員旅行も楽しめなかったんだ。


「なのに菜都さんは弘田さんに襲われている時まで、龍之介さんのことを好きでいた。龍之介さんのことを不審に思っていたのに、助けに来てくれると思っていた」


あんなことになって弘田さんにはもちろん龍之介にも腹が経っていたのに、彼のことを庇い好きだと叫び、無駄だとわかっていて早く助けに来いって声を上げたんだ。