「拓海先輩、どうかしたんですか?」


未歩ちゃんが不思議そうな顔をして尋ねてきた。


「さぁ。朝ごはんでも食べ損ねたんじゃない?」


「あぁ、お腹空いてるんですね。可哀そうに……」


大して可哀そうな感じでもなくそう言うと、読んでいたファッション雑誌を引出しにしまって仕事を始めた。
未歩ちゃんが、あまり物事に感心のない子で良かった。


お腹が空いてるなんて適当に言ったけれど、そうじゃないことは分かっている。
何であんな、一言多い態度をとるんだか……。


今晩の歓送迎会は、楽しくやりたい。今晩までに、いつもの拓海くんに戻ってくれるといいんだけど。



しかし仕事を始めると思っていた以上に今月の入力作業は多く、拓海くんのことも忘れて黙々と働いた。


その甲斐もあって入力作業がだいたい片付き顔を上げると、近所の仕出し屋のおじさんが弁当を届けにやって来るのが見えた。


「もうそんな時間なんだ」


時計を見ると、11時45分。あと10分で昼休憩の時間。


カウンターで納品書にサインをすると、おじさんから弁当が入った大きな箱を受け取る。