食事を終えるとコーヒーを入れて、清香さんが持ってきてくれたケーキをテーブルの上に置いた。


私は、細かく刻まれたフルーツがこれでもか!!っていうくらい、一段一段丁寧に挟み込まれている“ミルクレープ”。


フォークで掬ってひとくち頬張れば、フルーツの酸味とクリームの甘味が良いバランスで口の中に広がる。


「幸せ」


たまらず口から気持ちが漏れる。


「菜都さんって、ホントに自然で可愛い人ね。龍之介さん、絶対に手放しちゃダメよ」

「うぐっ……」


まさか清香さんの口から『可愛い』なんて言葉が出てくるとは思わず、ケーキを吹き出しそうになってしまった。


「菜都、大丈夫か? ほら、水」


龍之介からコップを受け取り、水を飲み干す。


「慌てて食うから、喉につっかえるんだよ」


コップをテーブルの上に置くと、はぁ~と一息つく。


別に慌てて食ったわけじゃないんだけどなぁ……。


今度は小さく溜息をつくと、龍之介が顔をのぞき込んだ。


「すぐ拗ねる。清香が“可愛い人”なんて言うから、驚いたんだよなぁ」

「っ……」


わかってるなら、最初から言えばいいのに……。こうやってすぐ私をからかうんだから。


でもその目は、やっぱり楽しそうに弧を描いていて。


私のちょっとした怒りを、一瞬で沈めてしまうんだ。