「なぁ菜都。本当にあいつと、いつか笑って会える日が来ると思うか?」


それは今朝、私が龍之介に伝えた言葉。


今会えばきっと感情的になってしまうものも、日が経てばそんなわだかまりも溶けて笑顔で会えると思う。


あんなことをされたのに、そんなことを思うのは甘いのかなぁ……。


「何黙ってんの? ここは“来ます”っていうところだろ」


腰に回っていた手を私の頭に移動させると、髪をくしゃくしゃと撫でる。


「もうっ、乱暴にしないでよ。髪が乱れちゃうじゃない」

「乱れても可愛いし、どうせ今晩乱れるから」


ボッ!! と音を立てて、一瞬で顔が赤くなった……と思う。


ホントにこの人は、いつもそんなことばかり考えているんだろうか。


そう言えば朝、『今晩帰ったら、お仕置きだな』って言われていたんだっけ。


「お仕置きのこと、思い出した?」

「思い出してませんっ!!」


ムキになって言えば、それを認めてしまったも同然。


龍之介に大笑いされて、ガックリ肩を落とした。


「じゃあその前に、腹ごしらえといくかっ」

「焼き肉?」

「俺に精を付けろってか? じゃあ目一杯食って今晩に備えるか!!」


楽しそう笑顔で立ち上がり、私の手を握る龍之介。


焼き肉と言ってしまったのはちょっと失敗だったけれど、この笑顔が見れたから良しとしよう。


そして彼の手を握り締めると、ギュッと握り返してくれる力強さに幸せを感じた。