そうか。これが龍之介の言っていた、『その辺は、清香がうまくやってくれるだろう』ってことね。


きっと清香さんが、うまく話をしておいてくれたに違いない。


清香さんが座ってるであろう場所を見れば、小さくピースサインを出してウインクしている彼女を発見。


やっぱりね。


弘田さんの件についてはこれで終わりではないだろうけれど、社員旅行中に大事にならなかったことにほっと肩をなでおろす。


「菜都さん? どうしたの?」


そんな私を見て、拓海くんが不思議そうな顔をした。


「あっ、ごめん。何でもない」

「それにしても、なんで堤所長なんだよ。俺を呼んでくれればよかったのに」

「あぁ、えっと、それに関しては……」

「西野、それは無理な相談だな」


背後から聞こえた声と肩に回された腕に、ドキンッと鼓動が波打つ。


「龍之介……じゃなくて堤所長。えっと、この腕はちょっとマズイんじゃないでしょうか?」

「何が?」


何が?って……。目の前の拓海くんはともかく、上座の方に座ってる本社の人や上司たちの視線が、こちらに集まってるでしょうがっ!!


表の顔は笑顔で、でも裏側は鬼の形相をして龍之介の腕を離そうとすれば、その手を払いのけられて強く抱きしめられてしまった。


「ギャッ!!」

「ギャッてなんだよ。菜都は俺のもんなんだから、どこで抱こうと関係ないだろ。ということだ西野。お前には悪いが、市川菜都は俺の女だからちょっかい出すなよ」


龍之介の口から突然発せられた“俺の女”宣言に、拓海くんだけではなく大広間にいた人全員が言葉を失ったのは言うまでもなくて。