「それだけ私のことが好きってこと?」
「何言ってんだ。今頃気づいたのか? 俺は菜都と初めて会ったあの日、応接室から出てお前と目があった瞬間に好きになってたよ」
「嘘?」
「本当。菜都の反応が面白くて、毎日が楽しかった」
龍之介の顔を見ていれば、それが嘘じゃないことは一目瞭然。
嬉しそうに笑っている目の奥には、しっかりと私が映っていた。
「でも、西野のやつもお前のことが好きだって気づいてさ」
「あっ……」
そうだった。スッカリ忘れていた。
旅行初日、龍之介の前に清香さんが現れて、それを見た拓海くんが『俺、菜都さんのこと絶対に諦めないから』って言ってたっけ。
「まぁあいつがどれだけ頑張ったところで、結果は見えてるけどな」
「そうなの?」
「はぁ? 違うのかよ?」
「どうかなぁ~」
自分から抱きついておいて、どうかなぁもへったくれもない。
拓海くんには申し訳ないけれど、やっぱり私は龍之介の事が好き。どんなことがあったって、その気持ちは変わり様がないみたいだ。
「西野のことは、またあとで話すとして。これからどうする?」
「これからって?」
私のその質問に、龍之介はニヤッと笑ってから、下に向けて指さした。
何? 下に何があるの? その意味がわからないまま、ゆっくりと下を向くと……。



