「そんなに一生懸命隠さなくてもいいんじゃない?」
「べ、別に一生懸命隠してるわけじゃ……」
お湯が跳ねる音が聞こえ波紋が身体に当たると、龍之介が入ってきたことを知らせる。
心臓がドクンドクンと、やけにうるさい。
これはお湯の温度が高いから? それとも……。
「何考えてるんだよ?」
私の背中にピタッと身体を寄せた龍之介が、私の腰に手を回す。
後ろから龍之介に抱きしめられる形になると、心臓の鼓動の高鳴りはMAXに達した。
「ねぇ、こんなに広いんだから離れてよ」
「嫌だ。てか、離れてちゃ話ができないだろ」
「そこまで広くないじゃない」
「どっちなんだよ」
そう言って笑う声は楽しそうで、なんだか私まで楽しくなっちゃうじゃない。
「左足」
「うん?」
「ちょっと貸して」
腰にある手を回し私の身体を反転させると、左足首を撫でだした。
それは労るように優しく、私の気持ちを落ち着かせていく。
「本当にごめん。怖かっただろ?」
「うん……」
「もっと早く助けに出るべきだった。お前を絶対に守るなんて、俺の驕りだよな。身体だけじゃない、菜都の心まで傷つけた」
「うん……」
「だからその傷を、両方の傷を俺に治させてほしい。ダメか?」
俯いていた顔をあげると、目の前には真剣な目をして私のことを見つめる龍之介がいて。
スッと伸ばした手が私の頬を包むと、親指がゆっくりと動き出した。



