またしても身構える私。
「何してんの? 早く脱げよ」
やっぱり……。あの妖しい目は、こういうことだったのか。
どうりで、私の危険察知レーダーが反応したわけだ。
もう外は真っ暗。湖も、緩やかな風に水面が揺れている音がするだけ。その姿はよく見えない。
なのに露天風呂は間接照明に照らされていて、薄暗い明かりでも姿を映し出すには十分だ。
「脱げるわけないでしょ。裸が丸見えになっちゃうじゃない!!」
「もう何回か見てるけど?」
「そ、それはそうだけど。今は状況が違うっていうか……って、何で脱いでるのっ!?」
私が俯いてグズグズしている間に、龍之介はトランクス一枚の姿になっていた。
「風呂入るのに、服着て入る奴いるのか?」
「そういうことじゃなくって」
「じゃあ菜都も早く脱げよ。あっ、足が痛くて自分じゃ脱げないか」
そう言うと私の服に手をかけ、脱がしにかかる。
「もうっ止めてよ!! 分かったから、自分で脱ぐからっ!!」
龍之介の目が、ニヤリと弧を描く。
しまった!! 龍之介の罠に、まんまと引っかかってんじゃない!!
後悔先に立たず───
自分で言ってしまったからには、脱がなきゃ女がすたるよね。
用意してあったバスタオルをバサッと勢い良く広げるとクルッと身体に巻き付け、服を脱ぎ始めた。



