極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~


しかし龍之介は私から距離を保って足を止めると、それ以上は近づいてこなかった。


普段の龍之介なら、絶対に後ろから抱きしめてくると思ったのに。


こんな状況でも、そんなことを考えてしまう私って……。


龍之介に対して心の中では怒っているのに、弘田さんにあんなことをされて龍之介にギュッと抱きしめて欲しい身体。


何龍之介に翻弄されちゃってるのっ!?


気持ちを落ち着かせるために長く息を吐くと、振り返り龍之介に向き直った。


「やっとこっちを向いてくれた」


龍之介の顔は笑っているのに、何故か悲しんでいるように感じるのは何故?


一歩二歩と勝手に動く足が、龍之介との距離を縮める。


「なぁ菜都」


龍之介が小さな声で私の名前を呼ぶと、ピタッと足が止まった。


「弘田から守ってやれなくて、ごめんな」


弘田という名前に、小刻みに身体が震え出す。


龍之介たちが助けに来てくれた時は気が張っていて感じなかって恐怖を、ここに来てからは弘田さんの名前が出る度に身体が如実に語る。


「今更言っても遅いけど、やっぱりお前を使うんじゃなかった……。本当に申し訳ない」


そう言いながら伸びてきた手に腕を取られると、そのまま引き寄せられ強く抱きしめられた。