とは言え、腑に落ちない部分もあるわけで。
「結局は完全に守ってもらえなかったんですけど……」
恨めしい目で龍之介を見れば、頭をポリポリと掻いて苦笑した。
「清香、ありがとう。ここからは俺が話すから」
龍之介がそう言うと、清香さんは私にもう一度頭を下げてから部屋を出て行った。
部屋にふたりだけで残されると、別に初めてふたりっきりになったわけでもないのに、身体が緊張に包まれる。
喉が渇いて缶コーヒーを飲もうとすると、いつの間に飲んでしまったのか中身は空っぽ。
缶の中を覗いていると、頭の横から伸びてきた手にその缶を取られてしまう。
「何緊張してんの? 今更でしょ?」
耳元で囁かれた言葉に隣を見ると、龍之介の意地悪そうに笑う顔。
ムカつく───
清香さんが言ってたことは理解できないわけじゃないけれど、もう少し私を“囮”に使う案に苦言を呈してくれてもよかったんじゃない?
龍之介の顔から視線を逸しスッと立ち上がると、さっきまで龍之介がいた場所に移動した。
「俺のこと、嫌いになった?」
それは今聞いてくる質問? そんなこと聞かなくてもわかってるくせに。
黙ったまま窓の外を見ていると、背中に龍之介の近づく気配。
それを身体全体で感じてしまい、自然と身構えてしまう。



