「清香さんっ!! それ破いちゃっていいんですかっ!?」
そんな大事な証拠を破り捨てちゃうなんて、どうかしてる。
「大丈夫よ。原本はちゃんと私が管理してるから」
そう言って、綺麗な顔でウインクをしてみせる。
ウインクひとつで済ませるなんて……。焦ったこっちは、損した気分だよ。
はぁ~と大きな溜息をつくと、ソファーに深く身体を預けた。
「で、ここからが私の菜都さんに対する本題」
ソファーにきちんと座り直すと、私の目をジッと見つめる。
「な、なんですか?」
そのなんとも言えない気迫に、ソファーの上に正座する。
「菜都さん、本当にごめんなさいっ!!」
いきなり大声で謝られて、目が点。何がごめんなさいと言うのだろう。
「弘田さんのことを調べてるうちにね、なぜだか菜都さん、あなたの名前が出てきてね」
「はぁ、私の……」
「営業所に行った龍之介さんの次のターゲットは、菜都さんだって」
なにそれ? 龍之介のターゲットが私っ!?
それってどういうこと?
窓辺から戻ってきた龍之介が私の隣に座り、首を傾げる。
「どうもそちらの営業所の誰かが、本社の若手くんたちと合コンしたらしく……」
そこまで聞いて、事の成り行きがわかってしまった私は、ガックリと肩を落とした。
「未歩ちゃんしかいないよね」
龍之介を上目遣いで見れば、ポンポンと頭をなでられてしまった。



