「どこで調べたのか携帯にメールが届いたり、仕事帰りに待ち伏せされたり。ヒドい時には、秘書課にまで来たりしてね」
「そんな時に、俺との縁談の話が持ち上がったんだ。弘田の怒りは、想像すればわかるよな?」
私に同意を求めるようにそう言われ、小さく頷いた。
さっきの神社での弘田さんを思い出し、身体が震え出す。
あの時の恐怖は忘れられない。
「わるい。今の菜都にはキツいよな」
龍之介に抱きしめれられて、腕の中で「大丈夫」と首を横に振った。
「怒りの矛先は、当然俺にも向いた」
「それって、賄賂の話?」
「やっぱり聞いてたんだな。そう、それだよ。俺が取引会社と手を組んで便宜をはかる代わりに、不正に金品を受け取っていたっていう噂が回ってさ。正直、参ったね」
そう言って苦笑しているが、相当のダメージだったことは間違いない。
それも直に部長とまで言われていた龍之介にとって、その噂は致命傷だ。
“火のないところに煙は立たない”
弘田さんは、そこを上手く使ったんだろう。
しかし龍之介がやったという証拠は挙がらなかったわけだけど……。
「本社中に広まった疑惑はなかなか払拭できずに、おれは営業所の所長として本社を出た」
抱きしめていた私の身体を離すと清香さんが用意してくれた缶コーヒーに手を伸ばし、それを一気に飲み干した。



