会社が次に取り組もうとしていた新プロジェクトへの参加が認められ、若手ながらチーフ補佐という大役も与えられた。
そして上層部の中でも専務が特に龍之介のことを気にかけてくれて、得意先のお嬢さんとの縁談を持ってきた。
「それが清香だったんだ」
その時清香さんはもう本社の秘書課に勤務していてすぐに彼女を紹介されると、話はあっという間に進んでいってしまったらしい。
「清香の父親も、専務から話を聞いて俺のことを気に入ってさ。俺もその時彼女がいなかったから、その話も悪くないと思ったんだ。清香もいい奴だったし」
「ふ~ん……」
やっぱり付き合ってたんだ。
わかっていたこととはいえ何となくショックを受けていると、リビングのドアが音もなく開いた。
「龍之介さん、そこからの話は私がするわ」
そう言いながら入ってきたのは清香さんで、カウンターバーの横にある冷蔵庫から缶コーヒーを三つ取り出すと、ソファーの前のテーブルに置いた。
「龍之介さん。今の言い方じゃ、私たちが結婚に向けて付き合ってたみたいに聞こえるでしょ。菜都さん、完全に勘違いしてるわよ」
「ねっ?」と私に向かって同意を求める清香さんに、曖昧に首を傾げてみせる。
「勘違いしてるのか?」
龍之介の言葉に、思考が停止。
龍之介のマンションや社員旅行中の態度。いままでの龍之介の話を聞いて、勘違いしない人がどこにいるっていうのよっ!!



