しばらくのあいだ私の目をじっと見つめ、そっと目を瞑ると小さく息を吐く。
「弘田と初めて会ったのは入社式の日。偶然席が隣同士でさ。ちょっと話をしたら気が合って、すぐに意気投合。そしたら奇しくも、配属先まで一緒でさ」
ついさっきまで辛そうな顔をしていた龍之介が、懐かしそうに微笑む。その顔を見るだけで、二人の仲が本当に良かったんだということを感じた。
私はただ黙ったまま、龍之介の話を聞き続けた。
仕事で悩みがあると、ふたりで時間も気にせずに明け方まで話しづつけたこと。
時には熱くなりすぎて、取っ組み合いの喧嘩になったこと。
そんなことがあっても、また次の日にはわだかまりなく仕事ができたこと。
好きな女性ができると、柄でもなく相談をしたこと。
「昔の話だから、気にするなよ」
“好きな女”という言葉にほんの少しだけ反応した私に気づいたのか、龍之介がぼそっと呟く。
「気になんかしてないよ」
心のなかを覗かれたようでフンッとそっぽを向くと、肩を抱かれ引き寄せられた。
「でもな、ある日突然、あいつの俺に対する態度が変わったんだ」
それは龍之介が、大手建設会社と大口の契約を結んだ直後のこと。
その大手建設会社は以前から狙っていた会社で、契約の話をうまく取り付けた龍之介のことを上層部はえらく気に入ったそうだ。
そしてすぐに龍之介は課長のポストを与えられると、彼を取り巻く環境が一気に変わった。



