私に決めさせるって……。そんなこと言われても困る。
弘田さんが龍之介にしたこと。今ここで、私にしようとしたことは許せないけれど。
同情すべき点が、ないわけでもない。
……って、絶対にゆるしてなんかやらないんだけど!!
「二度と、私の前に顔を出さないでください。一生許さないけど、それで見逃してあげます」
そう言うとクルッと踵を返し、歩き出した。
「菜都っ!!」
龍之介が何か私のことを呼んでいるみたいだけど、絶対に振り向いてあげないんだから。
無視を決め込んで歩るいていると、清香さんの前に差し掛かる。
「菜都さん、龍之介さんが呼んでるけど……」
そういう顔はバツが悪そうな、なんとも言えない顔をしていて。
「わかってます。でも今は話したくないんです。失礼します」
そう言うと、そのまま彼女の前を通り過ぎた。
足さえ痛くなきゃ、走ってこの場を逃げ出すのに……。
転んだ時にかなり捻ったのか、明らかに腫れていてどんどん痛みが強くなってきていた。
痛いやら、悲しいやら、悔しいやら……。
後から後からいろんな思いが溢れてきて、その思いが涙となって流れ出る。
「菜都っ!! おい、待てってっ!! 待たないと、後で痛い目見るぞ!!」
この期に及んで、上から目線っ!?
痛い目見る? 私が?
何で私が痛い目を見なきゃいけないのよっ!!
それに、心の中はずっと前から痛いんだからっ!! 今は足も痛いし……。
泣きながら怒ってずんずん歩く。歩いているんだけど、その速度は亀みたいに遅くて。
あっという間に、龍之介に捕まってしまった。



