「イヤッ!! 触らないでっ!!」
大きな声で叫んでも、ここは神社の大きな敷地内の奥深く。誰も助けに来てはくれない。
腕だけでズルズル後ろに下がる私の身体を、弘田さんが足首を掴み押さえ込んだ。
「逃げたって無駄だよ。ここには君と僕しかいない」
そう言いながら私の身体の上に跨ると、動けないように肩を強く押さえ込んだ。
「離して!! どうしてこんなことするのっ?」
今にも泣き出してしまいそうな気持ちを必死で抑えこみ気丈に振る舞うと、弘田さんは楽しそうに笑い声を上げた。
「どうして? 理由を聞きたい? まぁひとつ上げるとしたら、堤のせいかな」
龍之介のせい? どうしてここで龍之介の名前が出てくるの?
「なんで堤の名前が出てくるのかって顔してるね。可愛いよ」
私の頬をスルッと撫でると、その手で私の顎を強く掴んだ。
「そして腹が立つ。堤にも、あいつのことが好きなお前にも!!」
龍之介が弘田さんに、何かしたというのだろうか。この怒りようは尋常じゃない。
「堤はな、俺から何もかも奪っていくんだよ。仕事での手柄も立場も地位も名誉も何もかもっ!! その上、好きな女まで……」
好きな女? それって……。
「清香さん?」
弘田さんは悔しそうに唇を噛んだまま、何も返事をしない。
しかし、しばらくするとその顔を笑顔に変えて、嫌みに弧を描く口から恐ろしい言葉を発した。



