極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~


クルッと方向転換すると、その場からダッシュで駆け出す。


走るのは苦手だけれど、今はそんなことは言ってられない。


時々後ろを振り返ると、不気味に微笑みながら弘田さんが後をついてきていた。


何なのよっ、一体っ!!


私は脚が速いほうじゃない。きっと弘田さんが本気を出せば、すぐに追いつかれてしまうだろう。なのに彼は一定の距離を保っていて、一向に近づいて来ない。


腹ただしい気持ちを抑え、ただひたすらに走っていると、目の前に神社らしきものが見えてきた。


建物の周りは大きな木々に囲まれ、ちょっとした森状態になっている。


このままここに入るのは危険だとわかっていながらも、今いる場所がわからない私は、神社の敷地内に足を踏み入れた。


旅館を出た頃はまだ薄っすら明るかった空も、今はその色を黒く変えている。その上木々に囲まれたこの場所は、尚一層暗さを増していた。


誰かに助けを求めようとあたりを見渡すが、人っ子一人見当たらない。


するとさっきまで一定の距離を保っていて弘田さんが、その距離を詰めだした。


かなりの距離を走っている私は、スピードアップしたくても足がこれ以上動いてくれそうもなかった。


疲れきった足はもつれ始め、大きな木の根に足を取られると、そのまま派手に転倒してしまう。


「うぅ、痛い……」


慌てて立ち上がろうとしたが、転倒した時に足を捻ったのかズキンと痛みが走る。


「市川さん、足、痛いの?」


もう逃げられないとわかったのか、弘田さんがゆっくりと近づき足元にしゃがみ込むと、私の足を撫で始めた。