そして振り向いた先に立っていたのは……。
「弘田さんっ!?」
びっくりした。でもどうして弘田さんがこんなところにいるんだろう。
散歩をするタイプには見えないし、どこかへ行くという感じでもない。
ということは……。
私のあとをつけてきたとか?
昨晩の宴会の時や、今日の昼食のときのことを考えると、間違いじゃないような気がするのは私だけなんだろうか。
一瞬緩みそうになった緊張が、再度私の身体を包み込む。
「市川さん、こんなところでどうしたの?」
いかにも偶然のような事を言っているけれど、顔はそうじゃないことを語っていた。
ニヤリと含みのある目で私のことを見つめ、ぺろっと舌なめずりをする。
途端に頭の中で警鐘が鳴り響き、身体を包み込んでいたものが緊張から恐怖へと変わった。
怖い……。
ガクガクと足が震え出す。それでもなんとか立ち前を見据えていると、弘田さんが一歩ずつ近づいてきた。
それから逃げるように、私も一歩ずつ後ろへ下がる。
「逃げないで、少し話をしようよ」
その声は、もういつもの弘田さんとは違う。
狂気すら感じる声に、このままじゃマズイと身体が勝手に動き出した。



