私はいつから、こんなに弱くなってしまったんだろう。
元気だけが取り柄。くよくよ悩むなんて、私らしくないのに……。
恋をすると、人を本気で好きになると、こんなにも苦しくなるなんて知らなかった。
龍之介となら、ずっと憧れていたドラマみたいな恋ができると思ってたのに。
「私のひとりよがりだったのかなぁ」
『俺のことを信じろ』って言われても肝心なこと何も話してくれないんじゃ、どこをどうやって信用すればいいのかわからないよ。
誰もいないバスの中で足を抱えて丸くなると、悲しみを堪えるように目を閉じた。
「菜都先輩、今日泊まる旅館に到着しましたよぉ」
未歩ちゃんの声で目を覚ます。
どうやら、足を抱えて目を閉じたまま寝てしまったようだ。
あの後バスに戻った未歩ちゃんがそんな私に気づき、隣の席に座ってくれたらしい。
「今回の旅行は、未歩ちゃんにお世話になってばかりだね。ごめん……」
情けないやら恥ずかしいやら、未歩ちゃんの顔が直視できない。
ダメな先輩だ。
「何謝ってるんですかぁ~。未歩は嬉しいですよぉ。菜都先輩が、前より近くなった気がして~」
きっと本心から言っている言葉なんだろうけれど、相変わらずの話し方が面白さを誘う。
思わず俯いたままプッと笑ってしまうと、未歩ちゃんが頬を膨らませた。
「なんで笑うんですかぁ~。先輩、ヒドいですぅ~」
そんな未歩ちゃんの頭をまるで子供をなだめるように頭を撫でると、彼女の肩を抱いてバスから降りた。



