移動のバスの中では未歩ちゃんにお願いして、隣りに座ってもらった。
もし弘田さんが「隣に座らせて」なんて来たら困るから。
もちろん龍之介も……。
って、そんな心配はいらなかったみたい。
だって今日も龍之介の隣は、相変わらず綺麗な清香さんがその場所を独占していた。
ふたりの間に何かあるのは間違いじゃないだろうけれど、昨晩の電話のことといい、やっぱり気に入らない。
午前中は見事に手入れされた日本庭園を堪能し、その近くの店で昼食となった。
どこに座ろうか思案していると、無防備だった手をスッと取られた。
「昼食ぐらい、一緒でもいいでしょ?」
「弘田さん……」
しまった。午前中はひとりのんびり見学できたから、油断していた。
まさかここで、捕まるとは……。
未歩ちゃんに助けてもらおうと探すも、もうすでに配送の若手くんたちと席についていた。
未歩ちゃん、私より食事なんだね。
仕方なく手を引かれて弘田さんについていくと、その席には龍之介と清香さんが座っていた。
嘘でしょ……。こんなのって、あり得ない。
「堤、ここいいか?」
「あ、あぁ……」
ダメって言ってよっ!!
この状態で無理なのはわかっているのに、心の中でそう叫んでみた。



