「……ぱい、菜都先輩っ。朝ですよ、起きて下さ~いっ!!」
大きく身体を揺さぶられて、パッと目を開けた。
「やっと起きたぁ。もう心配しちゃいましたよぉ~。何度起こしても起きないんだからぁ」
本当に心配してくれているんだろう。未歩ちゃんが、今にも泣き出しそうな顔をしてベッドの横に立っていた。
「未歩ちゃん、ごめん」
身体を起こし頭を下げると、未歩ちゃんがベッドに座り込んだ。
「昨晩、堤所長と何かあったんですか?」
未歩ちゃんのいつもとは明らかに違う、トーンを落としたマジメな話し方に驚く。普通にも話せるなんて、知らなかったよ。
「堤所長、心配してましたよ」
「え? 龍之介が?」
未歩ちゃんの言葉に驚いて、ついいつもの呼び方で呼んでしまった。
「はい、その“龍之介”が」
未歩ちゃんがニヤッと笑いそう言うと、彼女の頭を軽く小突く。
『龍之介なんて、大嫌い』
なんて言って飛び出したから、怒ってるかと思ってたけれど。心配してくれてたんだ……。
こんな時なのに少し嬉しくなってしまい顔をニヤつかせていると、未歩ちゃんが私の顔をのぞき込んだ。
「喜ぶのは、まだ早いですよ?」
「べ、別に、喜んでなんか……」
「そうですか? まぁそれならいいですけど。堤所長から伝言です。『社員旅行終わったら覚悟しておけよ』だそうです」
こんな時なのに龍之介の言葉ひとつに嬉しくなってしまう私も私だけど、こんな時なのにそんな偉そうなことを言えてしまう龍之介に呆れて言葉を失う。
「伝えましたからねぇ。さぁ早く支度して下さ~い。朝食食べそびれちゃいますよぉ~」
いつもの話し方に戻ってしまった未歩ちゃんに苦笑すると、まだ気持ちが定まらないままベッドから起き上がった。



