そんなことは、言われなくてもわかってるっ!! 今日一日、私がどんな気持ちでいたのか……。
龍之介には、そのことをちゃんとわかってもらわないといけないって。
でも、それでも今は、この温かい龍之介の腕に抱かれていたかった。
単純でバカな女───
そう思われたって構わない。
だってその通りで、一度恋をしてしまったら、本気になってしまったら、そんな簡単には相手のことを嫌いになんてなれないんだから……。
「菜都、お前が好きだ、愛してる。今だって、その気持ちに嘘はない」
「じゃあ、なんで……」
龍之介のいつになく切なそうな声に、胸が苦しくなる。
彼の背中に腕を回し、同じように身体をキツく抱きしめた。私の気持ちが、全部つたわるように……。
「そうだよな。俺の気持ちを押し付けるだけじゃ、納得出来ないよな」
それは私に言っている言葉なのか、それとも自分に言い聞かせている言葉なのか。
龍之介の声からは、苦悩の色が現れているようだった。
龍之介の浴衣の合わせ部分が少し乱れ、逞しい胸が見えているところに顔をすり寄せる。彼の鼓動が、不安そうに音を立てていた。
龍之介がそこまでツラそうにするのなら、私は彼の言葉を信じて、彼が本当のことを全部話してくれるまで、待っていたほうがいいのかもしれない。
「龍之介……」
「菜都、実は……」
ふたりの声が重なり、龍之介がその後の言葉を続けようとした、その時。



