なぜだろう。昨日好きと言われたばかりで龍之介のことを信じているはずなのに、幸せマックスのはずなのに胸が苦しい。


不安で胸が、押しつぶされそう。


二人の見つめ合う姿が似合いすぎて、見ていられない。


サッと顔をそらし少し距離を取ろうと歩き出すと、ドンッと誰かにぶつかりそのまま肩を掴まれた。


「なんだよ、あれ……」


顔を上げるとそこにいたのは拓海くんで、その顔は怒っているようだ。


「拓海くん」


拓海くんは、私が龍之介のことを好きなのを知っている。そして、龍之介も私のことを好きだと言っていた。なのに婚約者という女性が現れて、それで怒っているんだろう。


「俺、菜都さんのこと絶対に諦めないから」


龍之介のことを見据え強い口調でそう言うと、私の足元にあるボストンバッグを掴む。


「あ、拓海くんっ。バッグは自分で……っ」


ボストンバッグに手を伸ばしかけて、その手を阻止される。


「俺がやる。菜都さんはこっちで待ってて」


少し怖いくらいに言われ手をギュッと握られると、ただ黙って頷きついていくことしかできなかった。