この会社の社員旅行は各営業所単位に、毎回本社の人間が二十人ほど加わって一台のバスで北陸を目指す。


今年は営業から10人とマーケット部から5人。あと……。


「今年は秘書課からも来るんですよねぇ~。未歩、ちょっと嫌ですぅ~」


未歩ちゃんが嫌がるのも、無理はない。


本社の花形、綺麗どころが集まった個性の強い秘書課の面々。


社員旅行で何かしら問題を起こすからと、どこの営業所からも敬遠されていた。


特に女子からは。


営業所にいる女性社員は小間使いくらいにしか思ってないらしく、旅行中は彼女たちにこき使われると、もっぱらの噂だ。


「私も初めて一緒になるから不安だけど、あくまでも噂だからね」


珍しくシュンっとしている未歩ちゃんをなだめていると、営業所の前に大型のサロンバスがプシューッと音を立てて停まる。


静かにバスのドアが開くと、バスガイドを押しのけるように何人かの女性が飛び出してきた。


そしてキョロキョロと辺りを見渡し、お目当ての人を見つけたのか、キャーキャー言いながら走りだしたかと思うと……。


「堤さ~ん、お久しぶりで~すっ!!」


えっ、龍之介? そうか、龍之介も二ヶ月前までは本社にいたんだっけ。


知り合いってわけだ。


それにしても、熱烈な再会ぶりじゃないのよ。


腕に手を回したり、身体を寄せたり。


そんなにくっつかれると、妬けちゃうんですけど……。