「なあ、俺のことが好きだからって、そんなに抱きつくなよ」

「ち、違いますっ。龍之介がいきなり、お姫様抱っこなんてするから……」

「ふ~ん、あっそ。違うんだ。じゃあここで、手を離そうかなぁ~」


相変わらず素っ気なくそう言うと、抱き上げている腕を緩めようとした。


「ダ、ダメッ!! 好きっ、龍之介が大好きっ!!」


あっ、言ってしまった。いや、言わされたと言うべきか……。


だってあのままだと、本当に離されちゃうでしょっ。龍之介は何をするか、先が全く読めないからね。


もう一度龍之介にしっかりとつかまり、そろっと目線を上げてみる。


私のことを見ていた龍之介の目線とぶつかると、胸がキュンと高鳴った。


なんでそんなに甘く、穏やかな目をしているの?


龍之介の甘く潤む目に耐えられなくなって、たまらず目を閉じた。


「なんで目、瞑るんだよ。ちゃんと見ろよ」


言葉とともに身体を強く抱きしめられ、閉じた目を慌てて開ける。


「な、何?」

「うん? 菜都、俺のこと大好きなんだ。じゃあちょうど良かったなと思ってさ」


ちょうど良かった? 何がちょうど良かったと言うんだろう。


わけがわからず、見つめ合ったまま首を傾げてみる。


すると龍之介がフッと笑顔を見せ、私をベッドに下ろした。