結局夕飯は、飛騨牛のステーキ専門店で、とびっきりのフルコースを奢ってもらった。
よくテレビのグルメ番組でレポーターが、「口に入れた瞬間、溶けちゃいましたぁ~」なんて言っているのを聞いて、「肉が溶けるかっ!!」って思っていたけれど。
高級なお肉って、ホントに口の中で溶けるんだぁ。
帰りの車の中で未だに感動の余韻に浸っていると、龍之介がおもむろに口を開いた。
「そんなに旨かったか? また連れてってやるよ」
「は、はい。ありがとうございます」
意地悪龍之介なのに優しくそう言われて、少し戸惑ってしまう。
また連れてってやる───
“また”と言う言葉が、耳から離れない。
龍之介はどういうつもりで言っているんだろう。
上司として? それとも、恋人として?
西野くんと決着をつけるって言ったのも、ただ単に私という面白い玩具を取られそうになったから、そう言ったわけじゃないよね?
龍之介も私のことが“好き”って思ってもいいんだよね?
そう言葉に出来ない代わりに、龍之介の横顔を黙って見つめた。
「運転中に、熱い視線向けるな。運転に集中できなくなるだろっ」
「どうして?」
「どうしてって、お前なぁ……」
初めて見る龍之介の少し照れた顔に、胸がキュンと高鳴る。
そして私の中の、“龍之介が好き”という気持ちが、急速に高まっていくのを感じた。



