「晩飯、何が食いたい?」
「えっ? 夕飯奢ってくれるんですか?」
「誰が、奢るって言った?」
「なんだ……。じゃあ安いもので」
「明日から海の幸が続くだろ。肉食うぞ、肉!」
この人は、人の話を聞いているんだろうか。安いものでって言ったのに、何で肉なのよっ!!
そりゃね、私も肉は好きだけど、そんなに持ち合わせがないというか……。
「心配すんな、奢ってやるよ。だから付き合え」
私がお金の心配をしているのに気づいたのか、龍之介は面白そうに笑う。
もう!! だったら最初からそう言ってくれればいいのに。
でも、やったぁ!!
奢ってもらえるなら、遠慮なく食べちゃうもんね。
右脇腹のあたりで小さくガッツポーズを決めると、龍之介を見る。
「あの。私まだ、明日の用意何もしてないんですけど……」
「あぁ、もういいよ。俺がしてきたから」
はい? 俺がしてきた? 何を?
意味が全くわからないんですけど。
龍之介の顔を見つめたままキョトンとしていると、運転中だというのに右手が伸びてきて、私の頬を摘んだ。
「っ!! いヒャいっ!!(痛い)」
「可愛い顔してんなよ。またキスされたいのか?」
えっ、キス? そ、それは……。
されたい……かも。
……って、菜都っ!! 何考えちゃってるのっ!!
今の訂正!!
ひとり頭の中であたふたしていると、赤信号で車を停めた龍之介が摘まんでいた手で頬を包み込み、すっと顔を寄せてキスをした。



