それにしても、まだなんにも用意してないのにいきなり「乗ってて」って……。
それも、なんで爽やか堤所長なわけ?
二人の時に会社モードで来られると、調子狂うんですけど。
「一体何考えてるんだろう」
そう呟きながらバックミラーを見ると、その縁に龍之介の姿が見えた。
慌てて姿勢を正し正面を向くと、龍之介が運転席のドアを開けた。
「なんだ、ちゃんと待ってたんだ」
そう言ってフッと鼻で笑い車に乗り込むと、すぐに車を走らせた。
こそっと龍之介の横顔を盗み見る。
うぅ……憎たらしいけど、やっぱりカッコいい。
何でこんなにカッコいいのに、意地悪で横柄な態度とるんだろう。
それも私にだけ。納得いかないよ。
なんて心の中で怒ってみても、龍之介は涼し気な顔をしてハンドルを握っている。
「そんなに見つめて、俺の顔に何かついてるのか?」
「いっ、いえいえ……」
バレてたんだ。だったらもっと早く言ってくれればいいのに。
やっぱり意地悪。
龍之介にバレないように窓の方を向いてからベーッと舌を出すと、少しだけスッキリした。



