極上ラブ ~ドラマみたいな恋したい~


思っていたより喉が渇いていたのか、一気に半分ほど飲み干すと自転車を押して坂を登り始める。


朝はフルスピードで下るこの坂道も、帰りは一苦労だ。特に夏場の、仕事疲れの身体には応える。


汗を拭いながらなんとか登り終えマンションの前に到着すると、そこには見たことのある4連シルバーリングのエンブレムが付いたステーションワゴンが、ハザードラんプを点滅させて停まっていた。


「嘘……」


これって、どう見ても龍之介の車だよね。なんでこんな所に停まってる? 


迎えに来るって言ったって、早くない?


ちょっと怖くなって自転車を引いたまま数歩後ずさりすると、ガチャッと音をさせて運転席のドアが開いた。


「お帰りなさい、菜都さん」


うおっ!! なんでいきなり爽やか堤所長でのお出迎え? 何か魂胆あっての仕業?


龍之介の考えを読もうとジッと目を見てみても、何も読み取ることが出来なくて……。


とにかく自転車を停めようとマンションの自転車置き場に行こうとしたら、龍之介にそれを阻止された。


「僕が置いてきてあげるから、菜都さんは車に乗ってて」


言葉は優しいのに、その目は“逃げるなよ”って語っていて……。


こ、怖いんですけど。


消え入りそうな小さな声で、「は、はい」と返事をすると、言われた通り助手席に乗り込んだ。