「今日も暑いね。はい、麦茶。よく冷えてるよ」

「菜都さん、サンキュー」


拓海くんに麦茶を渡し自分の席に戻ると、未歩ちゃんが椅子を滑らせて私に身体を寄せた。


「ねぇ菜都先輩。最近拓海先輩と仲がいいですねぇ~。付き合ってるんですかぁ?」


そう耳元で囁くと、興味ありげな目で私の顔をのぞき込む。


「そんなわけないでしょ。前と何も変わらないよ。そんなつまんないこと言ってないで、早く伝票片付けないとっ」

「えぇ~、ホントにつまんないですねぇ。でもまぁいいです。明日からの社員旅行で、楽しませてもらいますから」


社員旅行でって……。


いったい社員旅行でどんな楽しいことがあると言うんだろう。


私は憂鬱な気持ちで、いっぱいだというのに……。


拓海くんはあの日の宣言通り、遠慮んなくガンガン攻め込んでくる。それは龍之介が見えるところにいれば激しさを増し、まるで戦いを挑んでいるようだった。


しかしそのライバル視されている、龍之介はと言うと……。


拓海くんの態度を全く気にする様子もなく、爽やか堤所長を貫いていた。


そして私とも仕事の話をする時ひと言ふた言、言葉を交わすだけ。目さえ合わせてはくれなくなってしまった。