思った以上の水が口の中に入ってきて全部が飲みきれず、唇の隙間から垂れ始める。


そんなことお構いなしにすべての水を移し終えると、龍之介は満足そうに唇を離した。


やっと離された唇に身体の力を抜き、口の中に残っている水をゴクッと飲み干す。


「ちょっと龍之介っ!! いきなり何するのっ!!」


もうこの際、上司だろうが構わない。敬語も使わずに、龍之介に詰め寄った。


「私の同意も求めないで、何回勝手にキスすれば気が済むのっ!!」

「だって喉が渇いたって言うからさ」


全く悪びれた様子も見せずベッドにゴロンと寝転ぶと、ニッコリ笑って私を見た。


ヤバい……。その笑顔に、私は弱い。


「だ、だからって、口移しとか……困るんだけど。ペットボトルのまま渡してくれればよかったのに」

「それならそうと、言ってくれればよかったのに」


あはは、そうきますか。やっぱりダメだ。


普通の人はそんなこと言わなくたって、ペットボトル渡すでしょ!!


恋人でもない相手に、誰が口移しで水飲ませるっていうのっ!!


「信じられない」


ファーストキスじゃないけれど、ムードも素っ気もない勝手にされたキスに落ち込む。